オーストラリアの先住民・アボリジニは、
精霊との対話に、この神聖な楽器を重用する。
記憶が新しいところでは、2000年のシドニー・オリンピックがアボリジニ文化を世界に印象づけた最強の瞬間だろう。当時のIOC会長に「至上最高のオリンピック」といわしめたそのTV中継は、全世界37億人の視聴者を獲得した。同時に、映像のなかのアボリジニを見て、ある種の共感を得た視聴者もいることだろう。
ネイティヴ・アメリカンや我が国の
アイヌ民族など、先住民の文化は大自然と密接な関係のもとに成立しているのは非常に興味深い。しかし、後から流入してきた我々と先住民の融和にいたっては、いずれも何らかの問題を抱えている。両者間の溝を少しでも埋めるために、お互いの文化を理解すべきだろう。
「ディジュリドゥ」という楽器は、空腹のシロアリにより空洞化したユーカリの木を1〜2メートルほど裁断して裁断してつくられる。奏法葉、唇を振動させながら循環呼吸法によって息を吹き込み、奏者の口内と楽器内で共鳴させる。その倍音サウンドはあまりにも神秘的で、大地の奥深くから共鳴しているように感じるほどだ。ちなみに楽器名の由来は、その音色が「ディジュリドゥ」と聴こえるため、白人が名付けたという説が有力である。もっともアボリジニは部族によって違う名称で呼んでいるらしいが。
最近、この楽器はトランスやアンビエント・ミュージックのプロダクツに、その存在感を表現するようになった。こうした試みが続けば、我々の未来が少し明るいものに思える。