インド人が使いたくなる真実のインディア・サウンド!
1507ファイルからなる深遠な音の万華鏡。
CMで話題の〈口タブラ〉も収録!
ワールドミュージックもしくは民族音楽は、以前と比較にならないほど多種多様な音源が出回るようになった。これは純粋に西洋音楽以外の音楽を求めた音楽ファンの欲求によることはもちろんだが、サンプリングが音楽制作の手段として浸透し成熟して様々なコンテンポラリーミュージックが生み出され、一部のマニアに留まらないマーケットを形成したことも大きな理由だといえる。
しかし、いくら多種多様な民族音楽が聴かれるようななったとはいえ、音楽制作において「エスニックな音源を」とクリエイターが思うとき、必ず想起される頻度が高いのは未だにインド音楽、インドの楽器だといっても過言ではないだろう。
だからこそ、圧倒的なクォリティーを達成したインド音楽音源をクリエイターに届けたいし、届けなければならないというのが製作陣の決意だった。
音楽制作クリエイターをシェフに例えると、シェフは自分の追求する味を追求するとき、素材と調味料にこだわらないはずがないわけで、音楽制作に於いてもまた同様なことがいえる。胡椒と塩といったもっとも代表的な調味料をとってもピンからキリまである中で、その違いを認識し、自分の求めるものを選ぶのがシェフの仕事だ。出尽くした感のあるエスニック音源の代表ともいえる「インド物の音源」もまたそのようなクリエイターの作品の完成度に対する高い志に応えるべく、最高の音の調味料としての素材としてのクォリティーを求められる。そんな要求に応えるべく作られたのがこの“インディア・サプライズ”である。まさしく「どうせつくるならインド人もびっくりするやつを作ろうじゃないか」という単純明快な、しかしもっとも大切なテーマで作られている。
1967年ビートルズがロック史上にくっきりと足跡を残すことになった“サージェント・ペッパーズ・ロンリーハーツ・クラブ・バンド”を作ったとき、ジョージ・ハリスンは本物のインド音楽もしくは楽器をその素材として使用した。それと同じ次元で音楽を制作したいという要求に徹底的に応えるべく、実に1507ものファイルが収録されている。こういった音を収録するにあたってはネイティブに対する深い理解は当然だが、西洋音楽に対する深い理解と造詣も必要で、ロックとインド音楽との幸福な結婚を実体験として経験していることが望ましい。その条件を見事に満たしているのが久保田麻琴氏であり、前作の“インドネシア・ザ・マジック”と同様、見事に期待に応えてくれている。インドのチェンナイのスタジオ“Clementine Studio”でYotam Aqamをエンジニアに迎えてレコーディングされた音は触れることができるようなリアリティーに溢れている。生き生きと脈動しつづけるインドのミュージック・シーンにも触れておきたい。
以前はごく一部の特権階級のためのインド音楽が時代と共に大衆化し、多くの新しい演奏家が活躍している。神を讃える即興部分であるアーラープが短くなる傾向が見られ宗教的な意味合いは薄れつつ、超絶技巧を競う演奏に移行しているといった状況があるという。この大衆化ということではインドに限ったことではなく、多くのアジアの国で見られる傾向だが、西洋音楽を実に屈託なく取り入れコンテンポラリーなインド音楽が盛り上がっている。それでも必ず伝統的な楽器、旋律としてのラーガは継承されているようだし、またそうであり続けてほしいものである。インド音楽もまた、重厚な伝統のつらなりの上にある「今」に、生き生きとその生命力を保ち脈動し続けているのである。